前回のコラムで年齢によるステレオタイプについて書きました。
今時の50代、60代、その上の世代も、以前より見た目も気持ちも若い方が多いと思いますから、そこは気をつけるべきポイントです。
でも、そうは言っても体の変化は遅かれ早かれ訪れます。その中で、デザインや制作に一番大きく関わってくるのは視力の部分。
加齢による視力の衰え、いわゆる老眼は40代から始まると言われています。レスカルゴでもアンチエイジングを意識した商品、その他高齢者をターゲットにしたパンフレットやチラシなどの制作の場合、「文字は大きく」というリクエストをいただくことも多い。
たとえそれがなくても、制作サイドでも気を配るのが普通です。
文字を大きくすると何が起きるか
ところが文字を大きくするということは、同じスペースでの文字量が減る、つまり情報量が減ってしまうということを意味します。
だからと言って情報量を無理に保とうとすると文字組が占める面積が大きくなり、その分ホワイトスペースが削られてしまいます。すると今度は紙面全体が「文字ばっかり」で「ぎゅうぎゅう」の印象に。
圧迫感を覚え、「読めるかどうか」の前に「読みたくない」「見ていたくない」ものになってしまいます。
それを回避するために情報量を削りすぎてしまうと、今度は購入への説得力が欠けてしまうといった事態も。
また、視力については個人差も大きく、老眼鏡をかければ読むのには問題ないし、苦にならないという人もいます。
どの程度まで文字を大きくすれば良いのか、目安はあっても実は明確な正解はありません。
基準がないから、とにかくできるだけ文字を大きくしておけば問題ないと、補足の説明や注釈まで大きくしたり、本文を大きくしすぎて見出しとの差が少なくなってしまうと、メリハリがなくなります。
こうした紙面を見ると、全てが同じ状態で一度に目に飛び込んできてしまい、その結果、読みづらい(どこから読んでいいのかわからない)という状況を呼び込んでしまいます。
それに個人差やコアターゲットより若年の層まで広げて考えると、それほど大きな文字でなくても問題ない人もいます。配慮が度を過ぎると、副作用でそういう人たちを犠牲にしてしまうことになりかねません。
「読みやすさ」への解決は大きさ以外の要素も
前述の通り、読みやすさの基準は文字の大きさだけではありません。
紙面における文字面積の割合=適度な余白やメリハリも関係してきます。それに加えて、文字組自体の構成(幅や行間、文字のつまり具合や改行など)も重要です。
また、視力の衰えを考慮する時は、書体(フォント)の形や色の使い方も考慮すべきポイント。
例えば、読みやすい設計がしてあるUD(ユニバーサルデザイン)フォントを採用すれば、文字の大きさを変えずに可読性を高められます。UDフォント以外のフォントももちろん、読みやすさに傾向があります。
また、年をとるとだんだんとわずかな色の差がつきにくくなりがちですから、識別のための色の差は微妙なものは避ける、きちんと読んでほしい文字にははっきりした色使いをするなども有効です。
ただし、フォントや色使いは全体のイメージを大きく左右する要素でもあります。
表現したいイメージと齟齬がないかなど、全体のバランスをきちんと考慮することが必要です。例えば微妙な色使いが内容の理解とは関係ないところで使われるのであれば、ある程度イメージを優先しても良いはずです。
大切なのはバランスの良さ
読みやすさには様々な要素が絡んできます。
大きめの文字で情報を削ぎ落とし、すっきりシンプルにすることで、効果がある場合もあるでしょう。でも大きな文字を実現するために明らかに情報が足りないとなると、購入への判断材料が不足し、逆効果も生んでしまいます。
情報量やイメージも含めて、できれば配慮さえ感じさせない、バランスの良い落としどころを見つけることが大切だと思います。
今回のポイント
・文字の大きさは情報量に影響する
・読みやすさには余白やメリハリ、文字の組み方も関係するため
大きさだけを優先してしまうと、逆効果も生んでしまう。
・書体(フォント)や色使いも読みやすさの要素
・全体のバランスを考えて、程よい落としどころを見つけるのが大切
※このコラムは、2019年8月16日掲載「マイベストプロ東京」藤原ユカコラムより加筆修正して移行しました。
レスカルゴデザインオフィス 藤原ユカはデザインや販促の専門家として専門家派遣事業に登録しています。業務案内やパンフレットをつくりたい、新商品のパッケージをつくりたい、ロゴを考えたいなどのほか、ご希望に応じて、複数のツールの使い分けやSNSの導入など、総合的なアドバイスも合わせてさせていただきます。通常のご依頼のほか、こちらもぜひご利用ください。
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